猫の肥大型心筋症

診察をしていて、ネコちゃんには心臓病が結構多いのだと感じます。

最も多く遭遇するのは、心臓の筋肉が分厚くなって、全身に十分な血液を送り出せなくなる「肥大型心筋症」という病気です。

心筋が分厚くなった心臓は徐々に機能が低下していき、心不全の症状が現れてきます(元気がない、あまり動きたがらない、動いてもすぐ疲れる、呼吸が速いなど)さらに心不全が重度に進行すると、肺水腫や、胸水貯留を引き起こし、呼吸困難に陥り死に直結して行きます。

また、肥大型心筋症で大きな危険性があるのが、動脈血栓塞栓症です。
これは血液の流れが滞ると、心房内に血液の塊(血栓)が出来て、大動脈を介して全身あらゆる血管に詰まる危険性があります。これは激しい痛みや苦痛、麻痺、呼吸困難を急性に引き起こし、発症すると極めて死亡率の高い合併症です。

この病気が厄介なのは、老齢での発症が多いワンちゃんの心臓病と違って、心臓に雑音が認められない症例も多く、初期にはほとんど症状が認められませんので、早期発見が非常に困難なことです。ゆっくり進行していくと、飼い主さんも症状に気づかないことが多く、気づいて病院に来たときはかなり進行していて治療をしても亡くなってしまう症例も多いです。また、動脈血栓塞栓症は重度~末期に突如発症することがあり突然死するケースも少なくありません。

残念ながら、肥大型心筋症そのものを治癒させる方法はありません。心不全の進行を遅らせることと、血栓塞栓症を予防する内科的な治療が中心となります。進行度合いもさまざまで治療に対する反応もその子によって違いますが、早期発見で、緩徐に進行するものでは内科的治療で寿命を全うできる場合もありますので、やはり早期発見というのが鍵になって来ます。

そこで、心筋症は、通常の定期健診(身体検査)では判明しにくいので、症状がなくても、半年~1年に1回、心臓の超音波検査を受けていただくのが、理想的です。また、血液検査で心臓のマーカーを測ることも早期発見に有用です。

当院でも超音波検査を行う健康診断のコースもございますのでお気軽にご相談くださいm(__)m

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