犬の僧帽弁閉鎖不全症

予防接種などで来院されて、偶然に病気が見つかることがあります。

その中でもよくあるのが、心臓病です。

「心臓の雑音が聞こえますね」とお伝えすると、症状もなければ飼い主さんも気づきませんので、聞いて驚く方が多いです。

去年の診察では言われなかったのに何で?と思う方も。でもわんちゃんの1年は人でいう4年程に相当しますので、徐々に進行していた可能性があります。

通常、心臓病が始まっていても、初期の段階では、飼い主はほとんど気付きません。心臓病の症状が出始めるのは、心臓病が始まってからすぐのこともありますが、ほとんどがある程度時間がたってからです。

わんちゃんの心臓病で多いのが僧帽弁閉鎖不全症という弁膜症です。

この僧帽弁の閉鎖不全症は、あらゆる犬種に発生しますが、とくにマルチーズ、シーズー、ポメラニアン、プードル、チワワなどの小型犬、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、柴犬などの中型犬にも多く発生します。原因についてはいまだに解明されていませんが、加齢とともにその発生が増加します。キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは、若齢でも発生することが分かっています。

僧帽弁は、心臓の左心房と左心室の間に位置する2枚の薄い弁で、心臓が収縮するときに閉鎖し、左心房への逆流を防いでいます。僧帽弁閉鎖不全症は、この弁が完全に閉鎖できず、心臓が収縮する際に全身へ拍出されるべき血液の一部が弁のすき間から左心房へ逆流する状態をいいます。

この病気の発生初期は全く症状がなく、心臓が収縮するときに左心室から左心房に逆流するために発生する音(心雑音)が聞こえるだけですが、進行すると左心房が大きくなって、肺のうっ血や肺に水がたまり(肺水腫)、咳や呼吸困難になります。肺水腫の程度によりますが、呼吸困難から舌の色が紫になる(チアノーゼ)と、非常に危険な状態で、放置していると死亡します。この病気の進行は様々で、数年間にわたり安定していることもあれば、急激に進行する場合もありますので、必ず治療が必要となります。きちんと治療してあげれば症状も改善しますし、延命することも可能です。

なので、早期発見には、毎年のフィラリア予防やワクチン接種はもちろんのこと、健康診断なども利用して、定期的に病院に来ていただくことが重要だと感じています。

ちなみに呼吸数の増加が心臓病のサインとなることがありますので参考までに。(このようになる前に健診などで発見するのが理想ですが、このような症状があった場合は様子を見ず、すぐにご来院くださいm(__)m

見にくくてすみません(^_^;)

気温や犬種によっても多少の違いがありますので参考までに。

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