
犬・猫の嘔吐や下痢は、比較的よくみられる症状です。一時的な食事の変化などで起こることもありますが、異物の誤飲、中毒、感染症、消化管の閉塞、内臓の病気など、早い診察が必要な場合もあります。
「何回までなら大丈夫」と回数だけで判断することはできません。元気や食欲、血の有無、お腹の状態、誤食の可能性、年齢、持病などを合わせて確認することが大切です。
ぐったりしている、短時間に何度も吐く、血が多く混じる、吐こうとしているのに何も出ずお腹が張る、誤食や中毒の可能性がある場合は、この記事を読み進めるより先に動物病院へ連絡してください。
嘔吐・下痢があるときの受診の目安
以下は代表的な目安です。どれにも当てはまらないから安全、または様子を見てよいという意味ではありません。症状が続く・繰り返す、元気や食欲が落ちている、いつもと違うと感じる場合は、早めに動物病院へご相談ください。
今すぐ動物病院へ連絡してほしい症状
次のような症状がある場合は、早急な診察が必要になる可能性があります。
- ぐったりして立てない、反応が鈍い、倒れる
- 呼吸が苦しそう、歯ぐきが白い・青紫色に見える
- 短時間に何度も吐く、または水を飲んでも吐く
- 吐こうとしているのに何も出ず、お腹が張って苦しそうにしている
- 吐いたものに多量の血、またはコーヒーかすのようなものが混じる
- 多量の血便、または黒くタール状の便が出る
- 強い腹痛、ふらつき、けいれんがある
- 薬、植物、洗剤、殺虫剤、人の食べ物などを口にした可能性がある
- おもちゃ、布、ひも、骨などを飲み込んだ可能性がある
口や肛門からひも状のものが見えても、引っ張らないでください。消化管を傷つけるおそれがあります。
危険サインがなくても早めに相談したいケース
上記の危険サインがなくても、次に該当する場合は早めにご相談ください。
- 子犬・子猫
- 高齢の犬・猫
- 体が小さい犬・猫
- 糖尿病、腎臓病、肝臓病などの持病がある
- インスリン、ステロイド、抗炎症薬などを使用している
- 嘔吐と下痢が同時に起きている
- 食欲、飲水量、尿量にも変化がある
- ワクチン接種が完了していない子犬・子猫
ご家庭で確認してほしいこと
診察では、症状の経過が大切な手がかりになります。分かる範囲で記録してください。
吐いたとき
- いつ始まり、何回吐いたか
- 食前・食後のどちらで、食後どれくらいだったか
- 食べ物、黄色い液、泡、血、異物など、何が混じっていたか
- お腹に力を入れて吐いたか、前触れなく食べ物が出たか
- 咳、えずき、よだれなどがあったか
「嘔吐」と、食べ物が前触れなく出る「吐出」は原因が異なることがあります。安全に撮影できる場合は、症状が出ている短い動画が診療の参考になります。飼い主さまが見分けきる必要はありません。
下痢をしたとき
- いつ始まり、何回出たか
- 軟らかい便、水のような便、粘液、鮮血、黒い便のどれに近いか
- 排便時に強くいきんでいるか
- 同居している犬・猫にも同じ症状がないか
全身の様子
- 元気、食欲、水の飲み方
- 尿が普段どおり出ているか
- お腹の張りや、触られることを嫌がる様子がないか
- 最近フードやおやつを変更していないか
- ごみ、薬、植物、おもちゃなどを口にした可能性がないか
- 現在使用している薬やサプリメント、治療中の病気
嘔吐や下痢の主な原因
嘔吐や下痢の原因はさまざまです。
- 急なフード変更、食べ慣れないもの、食べ過ぎ
- ストレス
- 胃腸炎
- 寄生虫や感染症
- 膵臓、腎臓、肝臓、内分泌などの病気
- 食物に対する反応や慢性的な腸の病気
- 異物による消化管閉塞
- 薬物、植物、食品などによる中毒
症状の色や形だけで原因を特定することはできません。「胃腸の調子が悪いだけ」と決めつけず、全身の状態も確認する必要があります。
受診までにできること
- 静かな場所で休ませ、嘔吐や排便の時刻と回数を記録する
- 吐いたものや便の写真を撮る
- 安全に採取できる場合は、できるだけ新しい便を清潔な密閉容器へ入れる
- 誤食が疑われる場合は、商品名、成分、食べた量、時刻が分かる容器や写真を用意する
- 現在のフード、薬、サプリメントの名称を確認する
便の持参や保管方法は、来院前に病院へご確認ください。

ご家庭で避けたいこと
- 人用の胃薬、吐き気止め、下痢止め、鎮痛薬を与える
- 以前処方された残り薬を自己判断で使用する
- 塩、オキシドールなどを使って吐かせる
- 食事や水を無理に口へ流し込む
- 自己判断で長時間の絶食・絶水を行う
- 吐いた薬の量が分からないまま、同じ量を追加して飲ませる
- 口や肛門から出ているひもを引っ張る
食事や水分をどうするかは、犬・猫の年齢、持病、服薬、症状によって異なります。特に子犬・子猫、体の小さい動物、糖尿病などの治療中は、自己判断せず動物病院へ確認してください。
来院時に持参すると役立つもの
- 吐いたものや便の写真、症状が出ている動画
- 採取できた新しい便
- 症状が始まった時刻と回数の記録
- 現在のフード、おやつ、薬、サプリメントの名称
- 誤食した可能性がある物の容器、ラベル、残り
- 持病、服薬、最近受けた治療の情報
写真や便だけで診断できるわけではありませんが、診察や検査を進めるうえで参考になります。
診察では何を確認するの?
まず症状の経過、食事、誤食の可能性、使用中の薬、持病などをお聞きし、全身状態、脱水、口の中、腹痛やお腹の張りなどを確認します。
必要に応じて、便検査、血液検査、尿検査、レントゲン検査、超音波検査などを行います。異物や消化管の病気が疑われる場合には、追加の画像検査や内視鏡検査などを検討することもあります。
すべての犬・猫に同じ検査を行うわけではありません。年齢、症状、経過、全身状態に合わせて必要な検査を選びます。
1回吐いただけなら様子を見てもよい?
一度だけで、その後も元気、食欲、飲水が普段どおりで、ほかに異常が見られない場合は、内容を記録しながら経過を確認できることもあります。
ただし、誤食の可能性、血、腹痛、持病などがある場合は、回数に関係なくご相談ください。子犬・子猫、高齢の犬・猫では、受診の判断を早める必要があります。
迷ったら早めにご相談ください
嘔吐や下痢は、ご家庭だけで原因や緊急性を判断することが難しい症状です。「いつもと違う」「何となく元気がない」という変化も大切な情報になります。
症状の回数や写真、食事・薬の内容を確認し、迷ったときは早めに不二動物病院へご相談ください。
不二動物病院:0178-44-4321
※診療時間・休診日をご確認のうえ、お電話ください。
※本記事は一般的な情報です。診断や治療、食事・飲水の対応は、犬・猫の年齢、持病、症状によって異なります。気になる症状がある場合は診察を受けてください。
参考:Cornell University College of Veterinary Medicine「Emergency and Critical Care」、Cornell Feline Health Center「Vomiting」、Cornell Riney Canine Health Center「Diarrhea」、MSD Veterinary Manual「Introduction to Digestive Disorders of Dogs」、American Veterinary Medical Association「Pet First Aid」