人畜共通伝染病とは、文字通り動物から人へ、人から動物へうつる病気のことです。現在ペットとして飼われている、犬・猫・ウサギ・鳥などほとんどの愛玩動物がこの人畜共通伝染病にかかり、人に移す可能性をもっているそうです。しかし、少し衛生面に気を使って予防すれば、それほど危険ではないと思われます。
人畜共通伝染病を予防するには
病気にかからないようにするには以下のことを守って予防しましょう
①ペットの健康に留意して、病気のときは、すぐに獣医師の診断を受けること
獣医師の処方した駆虫薬で定期的に駆虫する
②定期的にグルーミング(シャンプーやブラッシング)をする
犬には犬用のシヤンプーを使った方がいいというのは犬の皮膚のペーハーにあわせて作られているからです。しかしシャンプーのやりすぎは、ばい菌等を守るための皮脂の油膜がとれすぎてかえってよくないです。二週間に1度のペースで良いでしょう。
③ペットに子供の顔をなめさせない
犬で70%、猫で100%が口の中に常在菌をもっているので抵抗力の弱い2~3歳ぐらいの子供、高齢の人、免疫関係の病気をもっている人、糖尿病の人などはペットからの病気にうつりやすい。
④ペットを触った後は、手を洗う
⑤ペットを使う食器は区別する
⑥生肉を切ったまな板と包丁は殺菌する
⑦ペットの寝床等はまめに洗う
⑧犬の体や周辺から定期的にノミを駆除する
⑨排泄した便はすみやかに処理する
①から⑨は飼い主として、最低限守らなければいけないことでペットからうつったと確かな検査結果がでるまでは、病気になったのはペットのせいだと決め付けない 。
病気の紹介
日本で特に注意しなければならない、ペットに係わる主な人畜共通感染症には次のような病気があります。
狂犬病
病原体 | 狂犬病ウイルス |
関係する動物 | 全ての哺乳類・鳥類 |
感染経路 | 狂犬病にかかった動物による噛み傷などから感染する |
動物の症状 | 狂躁型、麻痺型があるが、いずれも昏睡して死亡する |
人の症状 | 発症すると、様々な神経症状が現れ、昏睡にいたり死亡する |
予防法 | 日本においては、昭和32年以降国内での発生はない。しかし外国での発生は未だに多く、これが日本に持ち込まれるのを防ぐために、犬の登録・狂犬病予防注射は必ず行わなければならない。また、特に海外の汚染地域でもし犬にかまれた場合は、すぐに傷口を石鹸と水でよく洗い流し、医師の診察を受ける。発症前なら有効なワクチンがある。発生地域に旅行する際は、あらかじめワクチン接種をしておいた方がよい。 |
細菌性赤痢
病原体 | 赤痢菌 |
関係する動物 | サル |
感染経路 | 発症または保菌している人やサルのフン中の菌が経口感染する |
動物の症状 | 発熱、下痢、粘血便 |
人の症状 | 動物と同じ症状 |
予防法 | 飼っているサルの下痢に注意。また人の場合、インドや東南アジアなどから帰国した人の発症例が多いので気を付ける。 |
エルシニア・エンテロコリティカ感染症
病原体 | エルシニア・エンテロコリティカ |
関係する動物 | 犬・猫 |
感染経路 | 食中毒菌で、飲食物から感染することがある |
動物の症状 | 無症状の場合が殆どであり、まれに下痢などがみられる |
人の症状 | 下痢、胃腸炎、虫垂炎、関節炎、敗血症など |
予防法 |
仮性結核
病原体 | 仮性結核菌 |
関係する動物 | 犬・猫・サル |
感染経路 | 菌で汚染された食品、あるいは犬・猫などから感染する |
動物の症状 | 多くは症状を示さず、下痢などがみられる |
人の症状 | エルシニア・エンテロコリティカ感染症に似ているが、こちらの方が重い。虫垂炎など。 |
予防法 |
サルモネラ症
病原体 | サルモネラ |
関係する動物 | 犬・猫・ウサギ・サル・鳥類・は虫類(ヘビ・カメなど)健康な人でも、腸内に菌を持っていることがある |
感染経路 | 食中毒の原因菌で食物感染が主だが、動物が感染源になる場合もある |
動物の症状 | 成獣は無症状なことが多い。幼獣は下痢などを起こす |
人の症状 | 発熱、下痢、おう吐などの急性胃腸炎。乳幼児では菌量が少なくても発症することがある |
予防法 | 特にカメの保菌率が高いので、カメの水槽の水を替えるときなどにはゴム手袋をはめて行い、水槽を塩素系漂白剤で消毒するなどの注意をする |
カンピロバクター症
病原体 | カンピロバクター |
関係する動物 | 犬・猫・小鳥など(腸内に保菌していることがある) |
感染経路 | この菌は食中毒菌で飲食物を介して感染するが、動物が感染源になる場合がある |
動物の症状 | 成獣は無症状なことが多い。幼獣は下痢などを起こす |
人の症状 | 発熱、粘血便など、腸炎を起こす。乳幼児では菌量が少なくても発症することがある |
予防法 |
リステリア症
病原体 | リステリア・モノサイトゲネス |
関係する動物 | 犬・猫・小鳥など(人も含め腸内に保菌している場合がある) |
感染経路 | 食品媒介感染症として、乳製品による発生、その他散発例がある |
動物の症状 | 牛などの家畜で脳炎、流産、敗血症がみられる |
人の症状 | 脳脊髄炎、敗血症など。発生状況は、乳幼児や高齢者の割合が多い |
予防法 |
パスツレラ症
病原体 | パスツレラ・ムルトシダ |
関係する動物 | 犬・猫(口の中や、爪に菌が存在する場合が多い) |
感染経路 | 犬や猫のかみ傷、引っ掻き傷で起こることがある |
動物の症状 | 殆ど無症状。まれに気管支炎など |
人の症状 | 傷口が熱を持ち、腫れて痛むが普通は限局性で、傷口の周囲に広がっていくことはあまりない |
予防法 | 犬や猫からかみ傷、引っ掻き傷を受けないようにする。また犬や猫の爪切りを行い、子供には特に動物の正しい扱い方やいじめたりしないことを教える |
レプトスピラ症
病原体 | レプトスピラ |
関係する動物 | 犬(ネズミ) |
感染経路 | 動物の腎臓に入り込んだ菌が尿中に出て、この尿により、あるいは尿で汚れた土や水などにより皮膚から菌が感染する |
動物の症状 | 犬に対して腎炎などを起こす。ネズミは殆ど無症状 |
人の症状 | 発熱、出血、黄疸、腎障害など |
予防法 | この菌は乾燥に弱いので、動物の周囲を清潔にし、乾燥させる 生水を飲まない |
犬ブルセラ病
病原体 | ブルセラ・カニス |
関係する動物 | 犬 |
感染経路 | 感染した犬の流産胎子、流産後の排出物、尿に接触して感染 |
動物の症状 | 犬で流産、精巣炎、陰のうの皮膚炎・潰瘍などを起こす |
人の症状 | 発熱、関節痛、悪寒などインフルエンザの様な症状を示す。 治りにくく再発しやすい。日本における人での発生報告は無い |
予防法 | 流産した犬は、獣医師の検診を受ける。感染した犬の流産後の排出物や尿中に菌が存在するので、それを処理するときにはゴム手袋をはめ、速やかに行う |
オウム病
病原体 | オウム病クラミジア |
関係する動物 | オウム・インコ・その他の鳥類 |
感染経路 | 病鳥や保菌鳥のフン中のクラミジアを吸い込んだり、また、口移しでエサを与えた場合。また、かまれた場合にも感染する可能性がある |
動物の症状 | ヒナや若鳥で症状が重く、成鳥では無症状のことがある。 元気無く眼を閉じて羽を逆立てふくらんでいる。また下痢がみられ(お尻が汚れる)、やせてくる |
人の症状 | 高熱、頑固な咳など、風邪の症状に似る。重症の場合は肺炎 |
予防法 | 治りにくい風邪の場合で、飼っている鳥が上記の症状を示しているときには医師の診察を受ける(特効薬もある)。鳥のフンは毎日始末し、また、そのときほこりなどを吸わない様にする。鳥かごは定期的に熱湯消毒すると良い。鳥は輸送などのストレスや環境の変化で感染したり、フン中のクラミジアを排出することがあるので、飼い始めたばかりの鳥には特に注意する。輸入された鳥にも気を付ける |
猫ひっかき病
病原体 | 細菌と考えられている(バルトネラが有力視されている |
関係する動物 | 猫、特に子猫 |
感染経路 | 猫による引っ掻き傷、かみ傷 |
動物の症状 | 動物では発症がみられない |
人の症状 | 傷口に近いリンパ節の腫れが続き、まれに化膿するが、ほとんど軽症。発熱やだるさなどの全身症状があっても軽い場合が多い |
予防法 | 犬や猫からかみ傷、引っ掻き傷を受けないようにする。また、犬や猫の爪切りを行い、子供には特に動物の正しい扱い方やいじめたりしないことを教える |
トキソプラズマ症
病原体 | トキソプラズマ原虫 |
関係する動物 | 猫・(豚肉)・犬にも感染する |
感染経路 | 感染している猫のフン中のオーシスト(卵のようなもの)が口に入る。感染した豚の生肉を食べる(経口感染) |
動物の症状 | 幼若のものに症状が出ることがあるが、猫では腸炎、脳炎などを起こす |
人の症状 | 成人では感染しても無症状のことが多い。母親から胎児への先天性感染による流産や、胎児の先天性障害(脳炎、脳水腫、発育障害など)を起こすことがある |
予防法 | 猫のフンは速やかに始末し、猫には検便を行う。豚の生肉をあつかったときには、手やまな板などの器具をよく洗う。花壇など土を素手でいじらないようにする |
犬回虫幼虫移行症
病原体 | 犬回虫・猫回虫 |
関係する動物 | 犬・猫 |
感染経路 | 犬・猫にフン中に出た回虫卵が人の口から入り、それが腸内でふ化し、幼虫がごくまれに体内の各所に迷入することがある |
動物の症状 | 普通は無症状だが、子犬・子猫では食欲不振、下痢や嘔吐がありやせてくる |
人の症状 | 肝臓、脳、目などに障害を起こすことがある。幼児でまれに発生がみられ、軽度の貧血、食欲不振、微熱などの症状を伴う |
予防法 | 犬、猫の検便、駆虫を必ず行う(特に子犬、授乳中の母犬)フンはすぐに始末し、動物を砂場などに連れ込まない。幼児では犬や猫に触ったり、砂場で遊んだ後には必ず手を石鹸できれいに洗わせる |
皮膚糸状菌症
病原体 | 糸状菌(カビの一種) |
関係する動物 | 犬・猫など |
感染経路 | 発症動物との接触感染や、家の中のほこりが原因の場合もある |
動物の症状 | 脱毛したり表皮がはがれたりする。また、皮膚が厚くなったりするなどの症状は多様だが、無症状のことも多い |
人の症状 | 動物の症状と似て多様だが、その他、円形・不整形の白っぽい輪が出来たり、小さい水疱が出来たりし、痒みを伴う |
予防法 | 感染動物の隔離、治療。部屋の掃除を念入りに行う |
カイセン(疥癬)
病原体 | カイセン虫(ヒゼンダニ) |
関係する動物 | 犬・猫 |
感染経路 | 接触によりダニがうつる |
動物の症状 | 表皮内にダニがトンネルを掘るため非常な痒みがあり、脱毛、皮膚が厚くなったり、かさぶたができたりする。引っ掻いて化膿することもある |
人の症状 | 動物と同じ症状 |
予防法 |