マダニは、人やペットに寄生・吸血して、貧血や皮膚炎の原因になるだけでなく、病気の媒介など、健康上重大問題を引き起こします。
まずはマダニがどういう生物なのか紹介し、その次に、マダニが媒介する病気(特に人間にも感染するSFTSについて)、マダニの予防法について順番に説明します。
マダニとは

マダニは、一般に家の中に住むダニ(イエダニやヒゼンダニなどの微 小ダニ)とは違って、固い外皮に覆われ、大きさは吸血する前のもので約3~4mm(フタトゲチマダニの場合)で、血を吸ったあとは1cmほどにふくれあがります。吸血して巨大化した場合はイボのように見えるので、マダニだと気付かず、できものができたいう主訴で来院する飼い主さんもいるほどです。
日本に分布するマダニのうち、フタトゲチマダニ、ヤマトマダニなどの約20種類が犬に寄生します。
マダニの唯一の栄養源は、人を含む動物の血液です。幼ダニ・若ダニは発育・脱皮のため、成ダニは産卵のために吸血します。その吸血の際に、原虫やウイルス、リケッチア、細菌などさまざまな病原体の媒介者となることがあります。
マダニの一生

バイエル薬品株式会社様HP引用
マダニはオス・メスともに、孵化してから死ぬまで動物の血液をエサとします。
また、数ヶ月~数年は何も食べずに生きることができる、飢餓に非常に強い虫です。
マダニの多くは、春から秋(3月~11月)にかけて、活動が活発になります。
マダニの生息場所
マダニは日本全国どこにでも生息しています。
野山や畑が多いようですが、それだけではありません。
身近な河川敷や公園の草むらや家の庭などにもマダニが生息している可能性があります。
もちろん八戸市でも草むらなどに普通に生息しており、普段わんちゃんを散歩する道にもマダニはいます。
マダニの発生時期

マダニについて分かったところで、マダニが媒介する代表的な病気であるSFTSについて解説します。
人間にも感染する怖いマダニの感染症
マダニが媒介する疾患には、人にも感染する人畜共通感染症が多くあります。中でも特に注意したいのが、2013年にマスコミ等で取り上げられたことがきっかけで話題になった、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)です。
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは
主にSFTSウィルスを保有しているマダニに咬まれることにより感染するダニ媒介感染症ですが、近年ではSFTSウィルスに感染したネコに咬まれて感染し、死亡した症例も報告されています。またウィルス保有動物の血液や体液との接触でも感染すると考えられています。
イヌやネコ、人間ともに6日〜2週間程度の潜伏期間があり、その後、発熱、食欲不振、嘔吐、下痢、腹痛といった風邪のような症状が出ます。重症化が進むと、白血球や血小板の減少、頭痛、筋肉痛、意識障害、失語症などの神経症状、リンパ節膨張、皮下出血、下血などの出血症状がみられ死に至ることもあります。
しかも、致死率が10~30%と高く、症状の原因となるSFTSウィルスに対する有効なワクチンもないため、治療方法も対症療法しかありません。
そのため、マダニに咬まれないことがとても大切です。

マダニの予防法
ペットをマダニから守るため、また人へのマダニ被害を防ぐためにも、動物病院でしっかりとした予防を行いましょう。予防薬と言われるものの中には、忌避剤などのような確実な予防ができないもの、安全性が確立されていないものなどがいまだに販売されています。確実な予防と安全のため、動物病院で予防してください。
マダニの駆虫薬は主に2つのタイプがあります。
・スポットタイプの駆虫薬
スポットタイプとは、お薬をワンちゃんやネコちゃんの体表(首元)に滴下するお薬です。首元に薬剤を垂らすだけなので投与するのが簡単。チュアブルタイプが苦手なワンちゃんにも適しています。
・チュアブルタイプの駆虫薬
チュアブルタイプとは、おやつのように食べさせるお薬です。皮膚に疾患などがある場合でも、問題なく使用でき、投与後もすぐにスキンシップやシャンプーなどができます。また足元から頭まで、全身に均等な効果が期待できます。
それでもペットにマダニがついてしまったら?
もしマダニを発見しても無理に取ろうとしてはいけません。無理に引っ張って取ろうとすると、マダニの口の一部が皮膚に残り、炎症を起こしたり、病原体をペットにうつす可能性がありますので、見つけたらまずは動物病院へ。専用のピンセットや薬剤を使用して慎重に除去します。
元気がない、熱があるなどの症状があれば、適宜検査・治療をすすめていきます。
予防第一なのがお分かりいただけましたか?